豊かに生きていくための指針や術を学べる場にしたい

楠クリーン村 代表

高田 夏実さん

Natsumi Takata

神奈川県横浜市から移住

宇部市北部の山あいにある楠クリーン村。もともとは2002年、山口県内の農家をサポートするという地元大学のサークル活動として発足。現在は、神奈川、東京、兵庫からの移住者5人のスタッフで多岐にわたって活動中。その活動内容を高田さんにお話を伺いました。

「当初は学生の活動でしたが、時を経て価値観や内容が変化していき、現在は、生産、加工、販売、インターンシップ生の受け入れや食育等の教育、情報発信を、それぞれ小規模で行っています。自分たちで育てた野菜、お茶、果樹、鶏卵やお米などを地域のオーガニックマルシェや青空市で販売し、オンラインショップでは全国のお客様にもお届けしています。一般的な農業とは違い、私たちは『自給』をメインに活動しています」

都会での便利な生活から一転、田舎で自給。きっかけは何だったのでしょうか?

「高校卒業後、自分で考える力や解決する力、人と議論し良いコミュニケーションをとる力などを身につけることがなかったなと、これまでの教育に疑問を抱き、将来は教育に関わりたいと思いました。その少し後、東日本大震災があり、エネルギーに依存してただ消費するだけの都会の生活から抜け出したいと考えるようになりました。ボランティアサークルで東南アジアの国々に行き、農村の生活を体験したことも、その思いを強くしました。これからの生き方を模索している中、大学の授業でゲストスピーカーとして楠クリーン村の関係者が来られました。それを機に、在学中は何度もインターンでこちらに訪れ、卒業後に移住することになったのです」

瞬の出会いが人生を大きく変えることがあるのですね。

「そうですね。今はコロナ禍なので、国内から少人数のみの受け入れなのが残念ですが、以前は毎年、海外(アジア8か国)からの研修生も受け入れていましたよ。今はオンラインで情報交換をしながら幅広いテーマで議論を重ね、国境を越えて学び合い、切磋琢磨しています」

時代の流れによって様々な活動を展開される「楠クリーン村」ですが、今後の目標は?

「豊かに生きていくための指針や術を学べる場にしたいというのが一番にありますね。自然災害や新型コロナウィルスなどの感染症の蔓延、戦争など世界情勢の混乱による生活の変化は、今後ますます深刻になってくると思います。そんな中「自給」することや「生きる力」を備えること。エネルギー依存の見直しや、種まで含めた自給率の向上、道や建物などのセルフビルド技術の習得を実現しながら、それを皆さんにイベントとして学びの場を提供できたらと考えていますし、何より今の暮らしの楽しさを伝えたいですね」

高田 夏実さん
高田さんご夫妻。道(長さ約180m)はR3.11月セルフビルドされたもの

楠クリーン村