海のある町に住みたい
身近に貼り絵の題材、頼れる人の輪

藤井 蓮さん

京都から母の故郷に

 京都市出身の貼り絵作家、藤井蓮さん。昨年11月、40歳の人生節目の年にと、京都中心街の家から宇部市大小路の平屋に住まいを移した。自然に囲まれた穏やかな暮らしの中で、インスピレーションを得ながら創作活動に打ち込んでいる。以前の住まいは京都市中京区の、城郭や寺院が立ち並ぶ観光地の中にあった。日本画家を父に、ニット作家を母に持ち、自身も15年ほど前から貼り絵作家として東京や地方で個展を開いて活躍。作品と共に全国を巡る中で「一度海のある町に住んでみたい」という思いが芽生えたのが移住のきっかけだった。

 宇部は、母・ゆみさんの生まれ故郷でもある。現在市内に親類は住んでいないが、新天町一丁目のギャラリー「ギャラクシーふくなが」であった母の個展に貼り絵を出展したことから新しい縁が生まれた。2007年には、同ギャラリーで作家として初の個展デビュー。目をかけてくれたギャラリー店主の福永繋さん、洋子さん夫妻や、隔年の個展で出会うなじみのお客さんなど、頼れる人の輪があったことを決め手に、全国各地の候補地の中から宇部を選んだ。

 移住にあたっても福永さんが相談に乗り、知り合いのつてで理想的な借家にも出会えた。藤井さんの貼り絵は、身近な動植物から着想して作り出す。木々に囲まれ、鳥が鳴き、豊富な草花が生える庭がある家は、まさに題材の宝庫。網戸に止まる虫や、窓から見える梅の木など、目に入る面白いものをすぐスケッチし、次々と作品を生み出していく。

 和室や広々とした部屋があり、自分の大きな作品を飾れるのも都会暮らしにはなかった魅力の一つ。少しバイクで走れば市街地に出ることができる利便性の高さを併せ持ち、田舎すぎない理想的な住み心地の良さを感じているという。

「穏やかな人々や自然との触れ合いが、作品に奥行きと説得力を持たせてくれている。いろんな縁に恵まれ、静かな環境で目いっぱい活動できて幸せ。本当にぜいたくな日々を過ごしている。」と語る藤井さん。7月には、同ギャラリーで個展を予定しており、新作制作に向けて日々構想を練っている。

宇部日報2020年2月19日掲載
写真提供:宇部日報社