これが正しい食欲の形なのだろうなと体感しました。

地域おこし協力隊

熊田 菜緒さん

Nao Kumada

神奈川県相模原市から移住

相模原市で学習塾を経営し自ら講師を務めていた熊田さん。幼い頃から、老後は祖母のように自然豊かな田舎で暮らすのが夢でした。多忙な日々を送る中、働き方を変えたいと思い、自身のライフステージが変化する前に田舎暮らしを決意。2024年5月宇部市の地域おこし協力隊に就任し、北部全域6地区の課題解決に向け活動中。

なぜ縁もゆかりもない宇部市に移住されたのですか?

「小学生のとき社会科の教科書に掲載されていた秋吉台の写真がとても印象的だったのです。『山口県にはこんなに素敵なところがあるんだ!』と。移住を検討し、東京の移住相談センターで宇部の関係人口創出プロジェクトを勧めていただき参加しました。宇部を訪れたのはそれが初めてでしたが、釜で炊いた吉部のご飯をいただいたりお祭りに行ったり、1泊2日で宇部の魅力に触れました。他のまちにも行きましたが個人的には宇部が合っているなと感じました」

実際に宇部で田舎暮らしをされてみていかがですか?

「『こんな田舎に来て後悔していない?』と訊かれることがありますが、今より山奥で、虫の声と鳥のさえずり、川のせせらぎしか聞こえないようなところで暮らしてもいいくらい(笑)。吉部ではご近所さんの顔も名前も知っていますし、会えばお話もしたりお裾分けをしたり。今まででは考えられないことばかりですが、とても心地よく、私にはこのような田舎の生活が合っているようです」

移住されてどんな変化がありましたか?

「移住する前は、お腹は空くけど食べたいものはない、時間だからとりあえず食べる…という感じでしたが、今は吉部の白米が食べたい!○○さんの野菜を食べるぞ!と心から食事が楽しめるようになりました。これが正しい食欲の形なのだろうなと体感しました。北部地域の野菜は本当に美味しくて、今まで食べていたキュウリは本当にキュウリなのかと疑うほど、採れたてのキュウリが美味しいことも農家さんから教わりまし

た。今は畑を借りて、ご近所さんに教わりながら初めての野菜作りに挑戦しています。ジャガイモ、菜の花、これから白菜を植えるところです」

とても健康的で充実した時間を過ごされていますね。

「1日がとても長くなった気がしますね。こちらでは時間に対しての価値観も違います。私自身も含めて、今まで接してきた方々は予定をパズルのように組み込んでいく傾向がありましたが、北部地域の方々は、急な訪問でも快く接してくださり、予定を変更してくださいます。そのような穏やかで柔軟な姿勢はとても素敵だなと感じました。人や時間に対してゆとりが持てるのは、心にゆとりがあるからこそ。おかげで私自身もさまざまな変化があり、人間らしく充実した日々を送ることができています」

これから宇部で叶えてみたい夢を教えてください。

「市街地のお子さん向けに農業のスキルを身につける農泊体験をやってみたいなと考えています。宇部はアクセスも良く、海も山もあり自然が豊かです。教育という今まで培った経験を生かしながら、宇部で学んだことや魅力を伝えていきたいです。大人になってからでは身につけられない大切なことを、ここで体験させてあげたい。子どものうちに五感を使って体験すること、生きるために必要なスキルを身につけることで、自分の夢を力強く引き寄せられるような人になれると思います。地域の方には農業の基礎を教えていただいたり、空き家のリノベーションに一緒に参加していただいたりして、雇用創出や空き家の活用など、さまざまな課題解決や活性化につなげられたらと考えています」