落ち着かない都会暮らし 車の趣味復活、義父母も支え

尾藤 輝行さん

大阪から「嫁ターン」

 福岡県北九州市出身の尾藤輝行さんは、関西の企業に勤めていたが、結婚を機に妻・愛美さんの故郷に移り住んだ。このようなケースは「嫁ターン」とも呼ばれる。輝行さんにとっても、宇部は山口大工学部在学時に3年間暮らした地だったため、移住場所を考える際にイメージが湧きやすかった。

 大学卒業後は、大阪市にある電気設備施工管理会社に就職。電気工事士の資格を生かし、作業員や工程を管理する現場監督として働いた。しかし、あまりにも忙しすぎ、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に不満を抱えていた。

 作業現場が隣県だった時、移動だけで片道3時間を要した。往復で1日6時間。朝5時に家を出て、日付が変わってから帰宅する生活が一時期続いた。休日出勤も多く、プライベートを充実する時間は取れなかった。 都会の慌ただしさも肌に合わなかった。人が歩くスピードも速く、落ち着かない。就職して約一年半がたった頃、「自分にとって、暮らし続ける場所ではないな。」そう感じた。

 愛美さんとの結婚を考えていた時期でもあった。移住先は、生まれ故郷と宇部とで悩んだが、愛美さんの家族が住み、自分にも学生時代からの知り合いがたくさんいる宇部を選択。転職先は、知人から紹介してもらった浜町二丁目の野村工電社に決まり、2014年春に移住してきた。

 あれからもうすぐ丸6年。宇部の住み心地は「車が無いと困るが、田舎というほどではなく、日常生活に不便はない。産業は発展し、交通の便もよく、住みやすい」と評価。「移住は大正解だった」と語る。

 現在は、会社の近くに住居を構えて生活。移住前と比べると仕事の拘束時間は減り、5歳の一人息子と遊んだり、家事を手伝ったりする時間は十分に取れている。維持管理費が高くて大阪時代に手放していた趣味の車は、運転はもちろん、カスタマイズも楽しんでいる。愛美さんの両親が近くに住んでおり、精神的に心強い。自分の実家に顔を出す機会も増えた。「大阪時代と比べて、生活スタイルが大きく変わった」と充実感でいっぱいだ。

「都会にも地方に住みたいと思っている若い人はたくさんいる」と言う。自身の経験から、転職は心身にかなり負担がかかるため、「行政だけでなく、企業の支援策があると、考えている人にとっては動きやすい。情報も積極的に発信してほしい」と提案する。

宇部日報2020年2月18日掲載
写真提供:宇部日報社