「道が広い」「空が広い」 余生を穏やかに過ごすため

上谷 まみさん

東京からIターン

 東京・渋谷で生まれ育った上谷まみさんは、2018年10月、余生を穏やかに過ごす場所として、縁もゆかりも無い宇部にやってきた。移住して1年4ヵ月。週5回、子どもたちに英会話を教えながら、おおらかな暮らしを満喫中だ。

 移住先に宇部を選んだのは偶然だった。旅と空港が大好きで、ふと山口県を訪ねてみようと、山口宇部空港に降り立ったのが17年の初冬。ときわ動物園を巡り、市内のホテルに一泊した。

 宇部の第一印象は「道が広い」「空が広い」、そして「人がいない」。ずっと東京で過ごしてきた上谷さんにとって、開放的で過ごしやすい空間に感じられた。この時、直感的に余生を過ごすならここだと思ったという。

 そこからの行動は早かった。東京・有楽町の「ふるさと回帰支援センター」を訪ねて相談。山口県出身者の会を紹介してもらって参加し、県人の気質も研究した。

 息子の大学入学が決まり、18年3月に宇部市のお試し住宅を利用し、市の担当者を通じて移住前の心構えをしっかり相談できたことが、移住の大きな決め手となった。また、お試し住宅滞在中に、市の担当者から市内をくまなく案内してもらったことで、地域への理解も深まった。さらに、子どもと関わる仕事という希望に合った、今の職場が早く決まったのも移住を進める上で大きかったと振り返る。

 目下の困り事は、かかりつけの医者をどこにするかということ。医院の数は市の規模にしてはかなり多いと感じているが、見知らぬ土地だけに慎重になっているという。

 最も気に入っているのは、精神的余裕を持って過ごせる生活環境。英会話を教えている子どもの元気さ、周りの人の優しさは、自らの幼少時代の生活環境と重なる部分が多く、安心して暮らせている。「東京では、常に何か・誰かと闘っているような張り詰めた環境に接しており、ストレスを抱えていたのだと思う。今はそれがないし、宇部の人はいい意味で無防備で過ごしやすい」と語る。

 移住にあたり、運転免許を取得したものの、通勤は電車とバスを利用。都会と違い公共交通機関の本数は少ないが、必ず座れるので、不便さも感じていない。「遊びでは車の必要性を感じるが、普段はいらない。逆に宇部に来てから、徒歩で行ける距離でも車を使うくらい、みんな歩かないことに驚いた」と笑う。

 大好きな魚介類はおいしいし、関東との食文化の違いも楽しんでいる上谷さん。宇部での快適な暮らしをやめるつもりは毛頭ない。「とにかく住んでみたら分かるよ」。なぜ宇部にと聞く友達にはこう答えている。

宇部日報2020年2月20日掲載
写真提供:宇部日報社