子育て時間に感じた限界 自然体験や世代交流に魅力

五十崎 良さん

東京からUターン

 5年前に東京からUターンした宇部則貞郵便局局長の五十崎良さん。第1子の誕生を機に「伸び伸びとした環境で子どもを育てたい」と考えたからだ。

 当時住んでいた品川の家賃相場は、1LDKで月15万円。さらに駐車場代も4万円掛かった。認可保育園は待機児童問題が発生し、無認可園に預けると1人あたり10万円が必要と聞いた。3人の子どもを望んでいた五十崎家では、大都会での子育ての未来予想図は描けなかった。

 働いていたコンサルタント会社は、帰宅するのが毎日午前0時を過ぎ、土・日曜日もなかなか休みが取れなかった。2歳年下の妻・礼さんの実家がある郊外の八王子市から通うことも考えたが、片道1時間半の通勤を毎日繰り返すことは、やはり育児の時間が確保できないと思った。

 高校までを宇部で過ごし、大学から東京へ。「大都会での生活は楽しかったし、いろいろな経験もさせてもらった」と振り返る。しかし、子育ては別問題。現在は、実家近くに一軒家を借りて生活。移住空間は東京時代の3倍の広さとなったが、家賃は半分程度。3人のわが子は、家の中を自由に遊び回る。

 休日には、歩いていけるほどの距離にある恩田運動公園やときわ公園にも出掛ける。「ホウホウ」とサルの鳴き声をまねする息子たちの姿を見た時、自然を五感で吸収してくれていることにうれしさがこみ上げた。

 昨年の6月には、生後9ヵ月の三男の急病で、琴芝町二丁目の休日・夜間救急診療所を受診した。土曜日の夜遅くだったが、医療機関の連携と適切な処置で回復し、元気に過ごしてくれている。医療の充実を実感した。 縁が無い土地での生活に不安を抱いていた礼さんも、子育てサークルですぐにたくさんの友人をつくり、楽しく生活しているという。仕事をしたいという希望もかなえた。

「東京では豊かさをお金で買うが、宇部ではお金を掛けなくても自然体験や多世代交流ができる。小倉や博多に車で出掛けられる距離だし、空港も近いので都会に遊びに行くのも便利。宇部から一度離れて生活することはいいと思うが、将来帰ってきたいと思えるような地域になってほしいし、していきたい」と語った。

宇部日報2020年2月14日掲載
写真提供:宇部日報社