県の漁業就職フェアが縁「自分のために働く」を実現

画像:石川県からUターン 高井 宜孝さん(45)

石川県からUターン
高井 宜孝さん(45)

 県漁協東岐波支店所属の高井宜孝さん(45)は、10年ほど前に石川県からUターンし、漁師として再出発した。「好きな仕事ができて、プライベートも快適。人の温かさを感じる町だ」と生活を満喫する。

 両親とも宇部の出身だが、父が転勤族で、幼い頃は千葉県市原市や京都府京田辺市で過ごした。小学6年の途中で東岐波小に転入。東岐波中、宇部フロンティア大付属香川高へと進み、神奈川県相模原市や岩手県大船渡市にキャンパスを置く北里大に進学して、水産学について勉強した。

 大学卒業後は宇部に戻り、食品機械メーカーに就職。大阪支店を合わせて10年間勤務し、営業で全国を飛び回った。その後、石川県野々市市の豆腐機械メーカーに転職。2年が過ぎたころ、実家から祖父が亡くなったという知らせが届き、病気で夫に先立たれた母に「男がいない。戻ってきて」と懇願され、地元に帰ることを決心した。36歳の時だった。

 仕事探しをしていた際、海への仕事の憧れもあり、県主催の漁業就職支援フェアを訪れた。これを縁に2年間、ベテラン漁師の下で漁のノウハウを勉強。その間、国や県、市から生活支援を受けられ、安心して修行に集中することができた。

 転職やUターンなど人生の大きな決断ができるのは、兵庫県神戸市出身で六つ年上の妻・景子さんの理解があってこそ。「好きなようにすれば、いいんじゃない」。ポンと背中を押してくれる一言が、支えになった。

 漁は底引きがメインで、季節によっては刺し網漁も行い、赤エビやハモ、ワタリガニ、カレイ、モンゴウイカ、赤貝などを取る。「昔から、雇われるより自分のために働きたいという思いを持っていたので、今の仕事は合っている」と実感。広い自宅では大好きなウサギやネコを飼い、プライベートの時間も充実している。

 宇部の良さについて「都会でも田舎でもない、いい意味での中途半端さが魅力。海の幸はおいしいし、農業も盛ん。医療も充実しているので安心感もある。物価も安く、とても生活しやすい」と満足度は高い。

写真提供:宇部日報社

万農塾“卒業”し就農 畑や家、心強いサポート

画像:北九州市から脱サラ 青木 真司さん(45)

北九州市から脱サラ
青木 真司さん(45)

福岡県北九州市出身の青木真司さん(45)。=宇部市船木大野=はそれまでのサービス業を離れ、2013年からの憧れの農業に就いた。

 08年にやまぐち農林振興公社に相談したが、1000万円の支出金が必要と知り、断念。それでも諦め切れず12年に再び同公社を訪ね、楠こもれびの郷にある研修施設、万農(ばんのう)塾を紹介してもらった。自分に合った野菜の育て方を学び、就農から5年間はサービスを受けられると知り、思い切って転身した。

 移住者にとって大きな課題は、活動拠点を探すこと。同塾では農業のノウハウ指導に加え、就農できる畑や家族で住む家の口利きもしてもらったという。「知らない土地で右往左往しているときに間に入ってもらい、とても助かった」と青木さん。現在は、妻の知子さん(44)と「はらぺこファームあおき」(合計約1ヘクタール)でスイートトウモロコシやハナッコリーなど、年間30~40品目を栽培している。

 担い手不足の大野地区を活性化できるように、日々励んでいる。手伝いをよくしてくれる2人の息子を後継者に、とは考えていないが、興味を持ってくれたときは「帰る場所になりたい」と話した。

 宇部市での暮らしは、北部総合支所があるため必要な手続きにかかる時間が少ないことや、バスが時間通りに来てくれることなど、人口の多い都市では感じられなかった快適さがある。病院が近くにあるのも安心できる要素の一つ。

 今後も宇部で農業を続けていく上で、地元産野菜を求める人と農家のマッチングなど販売窓口をもっと増やし、農家同士でも加工や小売りを分担して効率よく回せるシステムをつくることが大切と指摘。市の力を貸してもらえればと語った。

 移住を考えている人に向けては「40歳手前の脱サラには不安があったが、一歩踏み込んだおかげで天職に出合えた。心配している以上に何とかなると伝えたい」と話した。

写真提供:宇部日報社

家族と一緒の時間大切 祖父との思い出の家に住む

画像:広島から東吉部に 徳永 祐亮さん(39)

広島から東吉部に
徳永 祐亮さん(39)

福岡県北九州市出身の徳永祐亮さん(39)。昨年7月、5年間暮らした広島県から、母方の祖父が住んでいた東吉部の住宅に引っ越した。子どもの頃、毎年のように訪れ、どれだけ月日がたっても変わらない町並みは「昔のまま温かく迎えてくれる場所」と言う。

 愛知県内の大学を卒業後、「海外で仕事をしてみたい」と考え、海上自衛隊に入隊。海が好きだったことや、PKO活動に興味があったことも大きかった。

 自衛官時代は半年以上海外勤務に就くことも珍しくなく、危険な任務をこなすことも多かった。そんな生活が長く続いたことから「家族と一緒に過ごせる時間を大切にしたい」と考え、33歳で退官。次の職を探していた時、知人からの勧めがあり、東広島市で林業に就いた。「収入は減ったが、生活は充実した」と語る。

 そうした折、亡くなった祖父の住宅が傷んでいることに気が付いた。定期的に母親が手入れしていたが、人が住まなくなった家屋は傷むのも早い。どんどん古くなっていく様子を見て「祖父との思い出を大切にしたい」と考えるようになった。そんな気持ちから宇部への移住を決めた。

 現在は美祢市のカルスト森林組合に所属。同市を中心に宇部、山陽小野田の山林で樹木の伐採や運び出し作業をこなす。個人宅の竹林などでも作業。「夏場や厳寒期の外仕事は大変だが、日々現場が変わることで、新鮮な気持ちで仕事に臨めるのが魅力。同じ種類の木でも一本一本違う個性を持っているのも面白い」と話す。

 宇部に住み始めてもうすぐ1年。休日の家族サービスでは地元の名所をのんびり散歩する。お気に入りのスポットは吉部八幡宮や荒滝山。自宅近くの山で山菜採りもし、季節の移り変わりを楽しむ。

写真提供:宇部日報社

独立の夢に最適の地 アスパラで農業の基盤

画像:京都から妻の出身地に 渡辺 泰彦さん(41)

京都から妻の出身地に
渡辺 泰彦さん(41)

京都府京田辺市出身の渡辺泰彦さん(41)は結婚を機に、移住。妻・美香さん(43)の実家そばの常盤台に住みながら、船木の農場でアスパラを育てている。

 高校で農業や園芸について学んだ後、大阪の服飾デザイン専門学校に通ったり、飲食店でアルバイトしたりして、自分のやりたいことを探していた22歳の時、京都市の九条ネギ生産会社に入社し、農業の道へ。4年ほど働き、奈良にある有機農業を手掛ける会社に転職した。

 仕事をしながら、常にいずれは独立したいという夢を描いていた。結婚前に、宇部には何度か訪れたことがあり、生活利便性が高いことを肌で実感。自然は豊かで、台風の直撃や大雪など天災被害の確率が低いことも知り、農業をするのにイメージがしやすかった。

 30歳の時に移住。初めの1年間は知り合いの土地を借りて野菜を作っていたが、より自分の理想の地を求めて、市役所に相談。紹介されたのが、楠こもれびの郷の農業研修交流施設「万農塾」だった。そこでアスパラに出合い、2年間の研修期間で栽培方法や生計を立てるすべを勉強した。

 その後、同塾の職員として6年間勤務し、昨年3月に独立。7500平方メートルの土地を借り、アスパラを専門に栽培する。1年目は5棟のビニールハウスで2・7トンを出荷。来春までにさらに5棟を増やし、4年後には出荷量を倍増させる。規模拡大に伴い、雇用も考えている。「まずは、アスパラで農業の基盤をつくる。その上で、将来的には他の野菜にも取り組んでいければ」と夢を語る。

 宇部への移住や農業を考えている人には「ネットで情報を得ることはできるが、市役所に足を運ぶことを勧めたい。とても親身になって相談に乗ってもらえる。そこから、新しい出会いやきっかけも生まれる」とアドバイスを送る。

 食は、宇部の魅力の一つ。「おいしい物がいっぱい。魚の刺し身は、どこのスーパーで買っても新鮮なので、大満足。移住してきた当初は関西が恋しかったけど、今はこちらの方が居心地が良い。移住してきて正解だった」と話す。

写真提供:宇部日報社

自分の頑張りが収入に 縁のない地、周囲の支え大きく

画像:神戸からIターン 松浦 駿さん(26)

神戸からIターン
松浦 駿さん(26)

兵庫県神戸市出身の松浦駿さん(26)は、高校卒業後、宇部で漁師としてのスタートを切った。縁もゆかりもない地での一人暮らしに、慣れない力仕事。最初は不規則な勤務時間や船酔いにも悩まされた。「辞めたくなることもあったが、先輩漁師や地元の人に支えてもらった」と振り返る。

 小学校低学年の頃、漁業の体験イベントで、網に掛かった大きな魚に胸を躍らせ「漁師」という職業に漠然とした興味を持った。その思いは大きくなっても変わらず、高校3年時の進路決定で、若手漁師の受け入れに積極的だった宇部岬漁業組合を知り、移り住むことを決めた。

 移住後はベテラン漁師に弟子入り。漁具の扱い方や魚が捕れるポイントの見極め方などを学んだ。優しい師匠だったが、道具の手入れについては別。「どんなに疲れていても商売道具は大切に。次の漁の準備も絶対にその日のうちにしておくこと」と厳しく言われた。

 2年間の見習い期間を終え、21歳で独り立ち。愛用している漁船は、長年師匠と共に瀬戸内海を駆け巡った船だ。今もメンテナンスをしっかりし、日々の漁に備えている。

 時期にもよるが、漁に出る日は午前2時半に起床。3時半に出港してポイントまで移動し、レンチョウ、ヒラメ、アカエビなどを狙う。魚種によっては防府市の野島や下松市の笠戸島まで繰り出すことも。お目当ての魚が大漁だったり、思わぬ大物が掛かったりすると胸が躍る。

 漁業は自然条件に左右される職業だが、自分の頑張りが収入に直結することも多い。「つらいこともあるが自分のペースでやれる」と言う。

 宇部の魅力について「飛行機や新幹線など交通の便が充実していて、首都圏や都市部へのアクセスが良好。道路も整備され、買い物もしやすい。宇部ラーメンの味も、お気に入り」と話した。

写真提供:宇部日報社